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加齢に伴う頭皮炎症の実態を解明 -マロニエエキスによる新たな抗炎症アプローチ –
- 毛髪の質感や強度は、毛髪そのものだけでなく毛髪が生み出される「頭皮環境」の影響を強く受けることが知られている。
- 加齢に伴う頭皮状態の変化に着目し、20代の女性と40代以上の女性の頭皮角層を比較することで、頭皮における炎症状態の実態を明らかにした。
- 40代以上の女性の頭皮では、明らかな赤みを呈していない被験者においても炎症指標および酸化ストレス指標の亢進が確認され、加齢に伴い微弱な炎症状態にあることが示された。
- 複数の植物エキスを評価した結果、マロニエエキスが「頭皮環境」のバランスを調整する作用を有することを見出した。
- 本研究成果は、第3回日本化粧品技術者会(SCCJ)学術大会にて発表した。
背景と目的
炎症をはじめとする頭皮状態の悪化は、毛髪の質感や構造、引張り強度・曲げ応力といった物性、さらには毛周期にも悪影響を与えることが報告されています。また顔などの皮膚を対象とした研究では、加齢に伴い炎症反応が進行することが知られており、炎症性因子の一種であるIL-1αの産生や、炎症指標(IL-1ra/IL-1α比)の上昇が示されています。さらに、こうした炎症反応の誘因の一つとして酸化ストレスの関与も示唆されています。
頭皮においても加齢に伴い毛髪物性が低下することは知られていますが、その背景には毛髪そのものだけでなく、毛髪が生み出される「頭皮環境」の影響があると考えられます。
そこで本研究では、加齢による頭皮状態の変化を明らかにし、それに伴う毛髪への悪影響を抑制することを目的として、頭皮状態を示す複数の指標について加齢依存的な変化を定量評価しました。さらに、得られた知見に基づき頭皮炎症の制御に有用な素材の選定を試みました。
【研究成果 1】 加齢に伴う頭皮角層状態の評価
20代の女性と40代以上の女性の頭皮(明らかな赤みを呈していない被験者)と比較対象として前腕内側から角層を採取し、形態・成熟度・炎症・酸化ストレスの指標を比較しました。その結果、40代以上女性の頭皮では、
・角層細胞面積の縮小
・多重剥離度の上昇
・酸化タンパク(CPs)の増加
・炎症指標(IL-1ra/IL-1α 比)の上昇
が認められました。これらの結果は、加齢に伴い頭皮で炎症および酸化ストレスが進行している可能性を示唆しています。
表1. 各評価項目と年代別比較まとめ

【研究成果 2】 頭皮炎症の制御に有用な素材の探索
頭皮の炎症制御に有用な素材を探索するため、7種の植物エキスを用いて表皮角化細胞での評価を行いました。その結果、マロニエエキスのみが、
・炎症性因子 IL-1α の発現を抑制
・抑制因子 IL-1ra の発現を亢進
する作用を示しました。これらの結果は、マロニエエキスが酸化ストレス下で生じる炎症応答を整え、頭皮の炎症制御に有用な素材となり得ることを示唆しています。

図1. 表皮角化細胞のIL-1αおよびIL-1ra発現に与える各種植物エキスの影響
さらに、過酸化水素(H2O2)処理による酸化ストレスモデルにおいても、マロニエエキスは過剰な炎症反応を抑えつつ、防御反応を維持するという特徴的な挙動を示しました。

図2. 酸化ストレスモデルにおけるIL-1αおよびIL-1ra発現に与えるマロニエエキスの影響
【研究成果 3】 毛髪構造への好影響の可能性
追加検討として、外毛根鞘細胞を用いた評価を行った結果、マロニエエキスはキューティクル形成に関わる遺伝子である KAP5 の発現を有意に亢進しました。

図3.ヒト外毛根鞘細胞のKAP5発現に与えるマロニエエキスの影響
この結果は、マロニエエキスが頭皮環境の改善だけでなく、毛髪構造にも好影響を与える可能性を示しています。
まとめ
本研究により、
・頭皮は加齢に伴い 微弱な炎症状態 にあることが判明した。
・マロニエエキスは「頭皮環境」のバランスを調整する作用を有するだけでなく、毛髪構造の改善につながる可能性も示唆された。
本成果は、エイジングケアを軸としたヘアケア・スキンケア製品に活用していく予定です。今後も、頭皮と毛髪の本質的な健やかさを追求する研究を継続してまいります。
本研究成果は、2025年12月8日~10日に開催された第3回日本化粧品技術者会学術大会にて発表を行いました。
| 発表会 | 第3回日本化粧品技術者会学術大会 |
|---|---|
| 発表タイトル | 加齢に伴う頭皮炎症の進行と抗炎症素材の探索 |
| 発表者 | 増田悠佑 |
| 発表日 | 2025年12月9日 |